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東京地方裁判所 平成8年(ワ)5735号 判決

第一事件原告

斉藤正美

被告

土屋好正

第二事件原告

ツチヤトレィディング株式会社

被告

斉藤正美

主文

一  被告土屋は原告斉藤に対し、四五万四一一六円及びこれに対する平成七年八月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告斉藤は原告会社に対し、二三万六七六一円及びこれに対する平成七年八月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告斉藤及び原告会社のその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用はこれを三分し、その二を原告斉藤の負担とし、その余を被告土屋及び原告会社の負担とする。

五  この判決は、第一、二項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  第一事件

被告土屋は原告斉藤に対し、一一三万五二九〇円及びこれに対する平成七年八月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  第二事件

原告斉藤は原告会社に対し、三九万四六〇三円及びこれに対する平成七年八月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実

1  本件事故

(一) 日時 平成七年八月一九日午後九時ころ

(二) 場所 東京都文京区関口一丁目一九番

(三) 甲車 被告土屋運転の普通乗用自動車(練馬五四み七四八六)

(四) 乙車 原告斉藤運転の普通乗用自動車(練馬三三あ三六三八)

(五) 態様 甲車が乙車に追突した。

2  損害(別紙損害計算書のとおり)

(一) 本件事故により原告斉藤は、乙車修理費八〇万三三三八円、休業損害二三万一九五二円の合計一〇三万五二九〇円の損害を受けた。

(二) 本件事故により原告会社は、甲車修理費三九万四六〇三円の損害を受けた。

二  争点(事故態様、責任、過失相殺)

1  原告斉藤

(一) 原告斉藤は乙車を運転し、脇道から左折して目白通りに入る際、右方向を確認したが右方向から来る車両は見えなかった。乙車は左折して目白通りに進入し、道路中央寄りの車線(第三車線)にある程度入る状態でやや大回りした。原告斉藤は、本件事故現場付近のコンピニエンスストアーに行こうとして、駐車場を探しながら第二車線をノロノロ進行し、第一勧業銀行の脇の路地に入ろうとしてほぼ停止状態になった。その直後に乙車は甲車に追突された。

(二) 原告斉藤は、完全に第三車線に入った状態ではなかったし、車線変更の合図も出していた。

(三) 被告土屋には乙車の動静を正確に確認しなかった過失があり、民法七〇九条の責任がある。

2  原告会社、被告土屋

(一) 本件事故は乙車が、脇道から目白通りに左折して進行し、目白通り沿いに駐車するつもりなのに、片側三車線の第三車線へ路地から直接進行した上で、進路変更の合図をせず、後方の安全確認もしないまま、急に左側へ進路変更を行った結果発生した。

(二) 原告斉藤には進路変更の際の後方確認義務違反、進路変更合図懈怠の過失があり、民法七〇九条の責任がある。

第三当裁判所の判断

一  争点(事故態様、責任、過失相殺)

1  事故態様

証拠(甲一ないし三、八の1ないし4、乙三の1ないし9、四の1ないし12、五、六、原告斉藤―後記採用しない部分を除く、被告土屋)によると次の事実が認められる。

(一) 本件事故直前に、原告斉藤は個人タクシーの営業として乙車を運転していたが、東京都新宿区改代町方面から片側三車線の目白通りに左折して進行し、その先の交差点を右折して車庫に戻るつもりであった。原告斉藤は車庫に戻るときは右交差点の右折車線につながる第三車線を走行するようにしていた。原告斉藤は第三車線に乙車の車体を半分位進入させた時点で、進路左側にあるコンビニエンスストアーに寄ろうと考え、左折の合図を出したものの、後方を確認せず第二車線に進路変更した。

被告土屋は甲車を運転して、本件事故現場付近の目白通りの第二車線を時速五〇キロメートルで進行していた。被告土屋は乙車が第三車線に半分位進入したのを見て、乙車がそのまま第三車線を進行するものと考えた。

乙車は甲車との距離が一五メートル位のとき、第三車線から第二車線に進路変更した。被告土屋は急ブレーキをかけたが、乙車の後部に追突した。

(二) なお、原告斉藤は第三車線には進入していないと供述するが、目白通りに左折進入するまでは車庫に戻るつもりでいたのであるから、通常の行動としては第三車線に進入したであろうことが推測されるのであって、右供述部分は採用できない。

また、原告斉藤は進路左側のコンビニエンスストアーに立ち寄ることを急に思いついたのち、駐車車両の脇を過ぎても第二車線を進行して第一車線に進入しなかった理由については合理的な供述がなく、この点もむしろ原告斉藤が第三車線から第二車線に進入直後に追突されたことを示すものと考えられる。

2  責任

右事実によると、原告斉藤には後方を確認せずに車線変更をした過失が、被告土屋には、乙車が完全に第三車線に進入していなかったのであるからその動静に十分な注意を払うべきであるのに、第三車線を進行するものと軽信してその動静に十分な注意を払わなかった過失がそれぞれあると認められ、いずれも民法七〇九条の責任がある。

3  過失相殺

右事実によると、本件事故についての過失割合は、原告斉藤を六割、被告上屋を四割とするのが相当である。

二  損害

1  原告斉藤

原告斉藤の損害額が、乙車修理費八〇万三三三八円、休業損害二三万一九五二円の合計一〇三万五二九〇円であることに争いがなく、前記認定の割合の過失相殺をすると、過失相殺後の損害額は四一万四一一六円となる。

原告斉藤が本件訴訟の提起、遂行を原告代理人らに委任したことは、当裁判所に顕著であるところ、本件事案の内容、審理経過及び認容額等の諸事情に鑑み、原告斉藤の本件訴訟遂行に要した弁護士費用は四万円を認めるのが相当である。

2  原告会社

原告会社の損害額が、甲車修理費三九万四六〇三円であることに争いがなく、被害者側の過失として前記認定の割合の過失相殺をすると、過失相殺後の損害額は二三万六七六一円となる。

三  まとめ

以上によると、原告斉藤の請求は被告土屋に対し四五万四一一六円及びこれに対する本件事故日である平成七年八月一九日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告会社の請求は原告斉藤に対し二三万六七六一円及びこれに対する本件事故日である平成七年八月一九日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからそれぞれその限度で認容し、原告斉藤及び原告会社のその余の請求はいずれも理由がないから棄却する。

(裁判官 竹内純一)

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